デイサービスかじまやー/宅老所も隣接する通所介護施設

浦添市経塚にある小規模型通所介護施設です(^_^) 施設の活動内容や特徴を載せていきたいと思っております♪ また、当施設ご利用希望の方は☎098‐917‐0202までご連絡ください!

作業療法の取り組み

リハビリ:シーティング ~車いす座位姿勢を考える~

こんにちわ!デイサービスかじまやーで勤務しております、作業療法士の富村です。
最近は更新が滞っていましたが、久しぶりに投稿したいと思います。

 『作業療法の取り組み』というカテゴリのブログでは、作業療法(というより、今まで培ってきた知識や技術)を活かした取組をご紹介できればと考えています。私の文章力の低さと若干の専門用語も入る為、非常に読みづらい内容になることが予想されますので、予めご了承ください。


 今回シーティングを施行させていただいたのは、脳卒中により重度の弛緩性右片麻痺と全失語を罹患した方です。日中のほとんどをティルトタイプの車いすに乗車して過ごす事が多く、食事以外の移動を含めたADL(日常生活動作)の全てに全介助を必要とする状態です。一分節程度の指示理解は可能なようですが、声掛けに対しては眉間にシワを寄せ不快を表す表情や、非麻痺側の手で拒否を示すジェスチャーで訴えるといったコミュニケーションを主にとられる傾向にありました。


車いす座位の姿勢は以下のようになります。 ↓      ↓      ↓

リハビリ:シーティング ~車いす座位姿勢を考える~


 このような不良姿勢をそのままにしておくと、脊柱の変形が進行し、麻痺側の肺領域での呼吸状態の悪化をきたします。そうなると、もし麻痺側肺領域に異物が侵入しても喀出することができませんし、体内のCO2濃度が高まることで嚥下反射が起こりにくくなるなど、免疫力が低下した高齢者がかかると致命的にもなりうる誤嚥性肺炎の発症リスクが高まることが考えられます。頸部のアライメント不良(写真では見えませんが、”首をかしげる”ようなアライメントを呈しています)も、嚥下を円滑にする為の舌骨の動きが妨げられ、ただ飲込むことすら困難となり、この方に唯一残されている”食べる・味わう”という活動も苦痛になることが予想されます。


つらつらと自分勝手な内容を載せましたが、お伝えしたいのは、
    ①不良姿勢は様々な廃用症候群や誤嚥性肺炎などの二次的合併症のリスクがあること
    ②きつい姿勢はただ”座っている”という事すら苦痛になりえること
    ③最後まで残存しやすい食事というADLも、本人にとっては苦痛と成り得、QOLの低下が懸念されること

の3点です。食事が摂れなくなること自体致命的ですが、一応作業療法士ですので食事自体が持つ要素の1つ”楽しみ”に焦点をあてて考えてみました。


 少し専門的なお話になりましたが、次は座面クッションの作成についてお話をさせていただきます。今回、クッション材は高反発のチップウレタンを選択しました。理由は、この方は座位時の重心が右に強く偏る傾向でしたので、低反発素材だとよけいにそれを助長してしまう可能性があったからです。そして、肝心の素材をネットとかでも探しましたが結構高いんですね、ウレタン・・・。しかし、50×60×10規格がメイクマンにて1000円程で売っているのを発見しました。


では、作成の工程を簡単にですが説明させていただきます。

    ①40㎝×40㎝の大きさに切り抜き、厚みは5㎝程度にします。厚みをつけすぎるとフットサポートに足が届かなくな
      ってしまう可能性があるので注意です。

    ②坐骨の位置や大腿部の周径、上前腸骨棘等の指標の触診から骨盤の前後左右の傾きを確認します。

    ③それらのデータをもとにウレタンにマーキングしていき、アンカーサポート(ずり落ち止めみたいな物です)の位置
      を決めます。また、左右のお尻の当たる部分の高さを左右差をつけたほうが良いのか?仙骨が当たる部分の
      深さはどうするか?など構想をたてます。

    ④実際に削っていきます。ウレタンを削ぎ取るのに色々な道具を使いましたが大型のカッターナイフが一番使いや
      すく安価でした・この時に一番気を使うのが、トータルコンタクト(座面クッションと臀部が偏りなく接触できて
      いること)です!これができていないと圧分散されなく、褥瘡の原因にもなりますので・・・

そして、実際が出来たのがこれです。    ↓     ↓     ↓

リハビリ:シーティング ~車いす座位姿勢を考える~


正直ウレタンを削るのが一番大変でした。でも、大切な利用者さんの為と、炎天下の中削り続けます。

一度試して大丈夫そうだったので、失禁した際の事も考慮して合皮のシートをかぶせて防水性を高めます。

リハビリ:シーティング ~車いす座位姿勢を考える~


結果です。
リハビリ:シーティング ~車いす座位姿勢を考える~


 シーティング前後で比較すると、姿勢の崩れは軽減しています。  ※ 麻痺側背面に三角マットもいれてます。
写真ではわからないですが”首をかしげるようなアライメント”をしていた頸部も起きてきて苦手そうだった頸部に左回旋もスムーズに出来、周囲を見渡しやすくなっているような印象を受けました。

 これで、先に挙げた廃用や関節変形の予防、嚥下機能の維持が期待できる可能性がでてきました。後は、麻痺側肩関節の亜脱臼予防と何らかの作業台になればと思い、カットテーブルを作成し装着してみました。(アームスリングは受け入れが悪かったこともあり)これで、この方にとって以前よりは落ち着いた環境が作れたかな?と思います。

リハビリ:シーティング ~車いす座位姿勢を考える~



シーティングが完成してからは、以前より時間が経っても姿勢を崩すことなく車いすに座れていました。対象者のお尻の形に合わせて作成しているので、クッションの型にキレイに臀部がはめ込むように座らせないと効果がなかったので、他のスタッフにもこのことをしっかりと伝達しました。いつも私と目を合わすと眉間にシワを寄せる表情をされるのですが、『どうですか?』と声掛けすると、少し『フッ』と笑っていた?ような表情をされていました。(良かったのかな?(^_^;))


 こうやってまとめてみると、作業療法士として病院勤務時代に培ってきたことが活かせるかな?と思った反面、限界も感じました。具体的には今回のように”食事活動に適切な姿勢”を構築できるのですが、嚥下障害が強い場合には手も足も出せません。(誤嚥した時の事が怖くて)病院では医者と言語聴覚士が嚥下造影(VF)や嚥下内視鏡検査(VE)を行った上で予後予測し、そこから医者の指示の元、理学療法士・言語聴覚士・作業療法士・看護師が共同して患者様の状態回復・改善に努めることができました。様々な職種の方がいて一緒に1人の患者さんに対して考えることができていた環境がすごく恵まれていたな・・・と思い返す今日この頃です。今回はここまでですが、また気が向いた時にでも更新したいと思います。それでは、ご閲覧ありがとうございました。失礼いたしますm(__)m

同じカテゴリー(作業療法の取り組み)の記事
桜満開!
桜満開!(2016-02-20 14:41)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。
TI-DA
てぃーだブログ
< 2024年05月 >
S M T W T F S
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
最近のコメント
QRコード
QRCODE
アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 0人
プロフィール
かじまやー
かじまやー
浦添市経塚にあるデイサービスかじまやーです!
常勤の理学療法士(リハビリ専門職員)によるお一人お一人に重点を置いた充実したリハビリプログラム、様々なイベント行事や課外活動の実施などなど。
ご利用者様・ご家族様が健やかに楽しく過ごせるよう、スタッフ一丸となって日々支援しております(^_^)/

宜しくお願いしますm(_ _)m